日本と世界を元気に
大学の学びを実務へ!目指せ起業家(アントレプレナー)

「耕作することが産業であり続ける世界」をビジョンに掲げ、
農業界初の「研究」「栽培」「販売」すべてをカバーするベンチャー企業を目指す

Forbes Asiaが2022年5月に発表した『Forbes 30 Under 30 Asia 2022』のIndustry, Manufacturing & Energy部門に選出された若き起業家がいる。株式会社AGRI SMILE代表取締役の中道貴也さんだ。Forbes 30 Under 30 Asiaとは、毎年Forbes誌がアジア太平洋地域を対象とした各分野で活躍する30歳未満の人材を選出する企画であり、7回目にあたる今回は4,000人を超えるエントリーの中から10部門で各30人が選ばれている。農業への情熱がほとばしる中道さんに、同社で研究開発の総括を務める林大祐さんを迎え、株式会社AGRI SMILEのビジョンと創業に至った経緯、目指す未来を、そして日本の農業の課題と可能性について語っていただきました。併せて高校生や大学生、未来の起業家に向けたメッセージもいただきました。


株式会社AGRI SMILE 代表取締役
中道 貴也さん 株式会社AGRI SMILE
代表取締役
中道 貴也さん
2017年京都大学大学院農学研究科修了。在学中は地元兵庫県丹波市に農業で貢献したいという思いから農業資材の研究に取り組んだ。対象資材は「第25回地球環境大賞」にて「農林水産大臣賞」を受賞。修士課程修了後はビジネスの観点から農業を活性化させたいと、東証プライム市場上場企業に経営企画職として入社。新規事業の立案だけでなく、ITを駆使した業務効率化やデータを活用した粗利益改善を全国で行う。また、次世代を担う幹部候補生採用にも注力する。その後、農業を通して各地域をより魅力的な場所にしたいという想いから退社、2018年8月、株式会社AGRI SMILEを設立。三田学園高等学校出身。
株式会社AGRI SMILE 研究開発部部長 林 大祐さん 株式会社AGRI SMILE
研究開発部部長
林 大祐さん
2018年京都大学大学院農学研究科修了。大手飲料メーカー入社後、品質管理・生産プロセスの改善や生産現場のDXに関する技術開発に携わる。業務の傍ら、原料となる農産物の圃場や生産者の元を回り、農業現場における様々な課題に直面。技術的な側面から農業課題の解決に興味を持ち、2020年AGRI SMILEに参画。自らの経験を活かし、ONLINE CONFの構想・設計を担当した後、2021年に研究開発部の立ち上げを主導。現在はバイオスティミュラント資材関連研究を中心に、持続的な農業の実現に向けた研究を推進。大阪府立北野高等学校出身。


株式会社AGRI SMILEにかける想い

中道:私たちAGRI SMILEは、農業が栽培環境やニーズの変化に適応し、市場から評価される農産物を作り続けることを可能にする技術の開発、提供を行っています。これらの活動をとおして、農業に携わる人々が経済的にも精神的にも豊かな生活を送ること、また環境や地域と調和した栽培体系が確立されることを支援しています。
 農業界を事業領域として選んだのは、農業が盛んな兵庫県丹波市で生まれ育ち、祖父母が兼業農家であったことが一番の理由。幼いころから祖父母の手伝いをしていて、高校、大学、そして大学院と進む中、「農業現場の良き通訳者になりたい」という想いが強くなりました。これまで熟練農家の「感覚」を頼りに農作物の状態を把握して栽培や収穫を行うことがほとんどだった農業。耕作地や農作物の状態の変化を的確に捉え、再現性を高めていくには高い壁がありました。また昨今は、消費者行動と意識の変化や気候変動などの影響により市場のニーズも激しく変化します。AGRI SMILEが推し進める情報収集とデータの効果的な利用はこれら課題を解決する一助となり、産地とともに持続可能な農業を作り出すことができると信じています。

泥臭いやり方で駆け抜けた創業当時

中道:想い描いていた事業構想を実現させるためには、既存の組織に入るのではなく自分で会社を作るしかないと感じ、当時勤めていた会社を辞め、2018年に株式会社AGRI SMILEを創業しました。ゼロからのスタートで、最初の頃は給料も取ったり取らなかったり。貯金が1万円を切ることもあり、交通費を削るために20キロ以上歩いたこともありました。事業に協力してくれる最初の農業協同組合(Japan Agricultural Cooperatives:JA)とご契約させていただくのに1年。日々、崖っぷちで戦っていました。
 それでも困難を乗り越えてこられたのは、大好きな農業に関わりながら自分のやりたいことに挑戦できる喜びを、常に嚙みしめることができたからだと思います。創業して間もなく、データサイエンスやソフトウェア開発に長けた仲間との出会いも後押しになりました。以後二人三脚で様々なコンテンツを生み出してきましたが、知恵を絞って生み出したものを使ってもらえる嬉しさは何ものにも代えがたい。現在では規模も拡大し、約50名のかけがえのない仲間とともに事業を推進しています。

どんな事業?

中道:創業から5年目を迎えた現在は、産業としての農業を「研究」「栽培」「販売」の3つの側面から後押ししています。農業全体のバリューチェーンを体系的に把握・支援できるからこそ幅広い分野での事業展開が可能で、これが当社の強みになっていると思います。

「研究」バイオスティミュラント(Biostimulant:BS)

:農業現場の脱炭素化に向けた取り組みを加速し、気候変動によってもたらされる諸課題を解決する一助とすべく、バイオスティミュラント(Biostimulant:BS)の効果的な利用法の開発を行っています。BSとは、より良い生理状態を植物体にもたらす様々な物質や微生物、あるいはそれらの混在する資材の総称です。植物のストレスを緩和し、本来持っている能力を引き出して健全な状態を維持する資材や、収穫後や貯蔵の際に好影響を与える資材があります。弊社では独自のBSライブラリーを創成し、それらの効果を評価する指標の確立にも成功しており、特許出願を完了させています。BSに関した研究開発活動では、JAや京都大学、三井物産株式会社とも連携し、実用化に向けて取組を加速しています。

ONLINE CONF

:最先端の生命科学研究を支援し、研究者の存在感を向上させることにも取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、大学や研究機関の学術会議がオンライン化する中、Forbesの選定理由にもなったONLINE CONFというプラットフォームを開設しました。バイオサイエンスや農業の研究者が研究成果について議論するためのものから始まりましたが、オンラインでの会議にはリアル感がない、タイムリーな交流ができないなどの声を受け、1000回以上改修しています。研究者と二人三脚で開発することで現場のニーズを吸い上げ、「対面で研究発表をしているような感覚」の持てる新しい形を提供することができています。その結果、サービス開始から2年足らずで30,000人以上の研究者にご利用いただきました。現在は、地理的、金銭的な制約を受けにくいというオンラインのメリットを最大限活かし、若手研究者の参加を促進して活躍の場を広げるとともに、大学生・高校生など、将来の研究者を発掘する仕組みづくりにも寄与できるのではないかと考えています。今後は産学官連携を加速させ、日本の学術、研究の発展に寄与できるような事業をさらに展開していきたいと思っています。

「栽培」KOYOMIRU

中道:暗黙知である栽培技術について、科学的知見から解析し、脱炭素技術を現場に応用することを目指し、トレーサビリティ(=商品の生産から消費までの過程を追跡すること)の向上を目指しています。例えば、これもForbesの選定理由になったKOYOMIRU。独自に開発した生産現場のDX(=デジタルトランスフォーメーション)解決ツールの一つで、農作物の効率的な収量向上のために、農家が作物をどのように育てているかを追跡・モニタリングし、集めた情報を解析します。DXにはデータ収集、整理、解析と現場へのフィードバックが欠かせませんが、農業現場を理解し運用まで落としこんでいくのが最も重要で、かつ難しい。この点、農業技術や現場の課題に詳しい社員が多数在籍していて、JAさんや生産者さんのニーズに沿った支援ができるのが弊社の強み。既にいくつかのJAさんを通じて農業現場へ導入されていますが、デジタル化に不慣れな農家さんにも簡単に利用してもらうことができ、業務の効率化向上につながっていると評価されています。他にも、JAさんや生産者さんと連携し、肥料価格の高騰と世界的な脱炭素の流れの中で、経済性と環境負荷の軽減を両立できる栽培体系を模索しています。

「販売」

中道:産地における選果/物流オペレーションの最適化によって収益の向上を図り、なおかつ産地の魅力や脱炭素の取組を多くの消費者に知ってもらう活動を行っています。例えば、出荷されたみかんやもも、トマトの状態を糖度、酸度などの観点から、AI技術を駆使して評価し、機械学習によって産地間で比較評価できるようにしました。得られたデータを、農学的に解析することで農作物の栽培にフィードバックさせたり、土壌の改善につなげることもできます。

日本の農業の課題と可能性

中道:これまでの事業の中で、見える化してこなかった大量のデータの有効活用に大きな可能性を感じています。例えば、AIなど工学的な技術から得られるデータは、農学の専門知識を持って解析すれば生産性の向上につなげることができます。農業におけるデータの収集は時間を要し、気候変動など様々な影響を受けるという難しさもありますが、開花・成熟時期の予測や、病気対策、高効率で品質管理などができるようになれば、出荷の際に有効な戦略を組めるようになります。一方、JAの担当者さんや農家さんへの情報伝達にはまだまだ課題も多い。特に農業従事者は、主に後継者不足から高齢化が進んでいますから、 最新技術から得られる情報をいかにシンプルに分かりやすく伝えるかが問われます。それにはJAさんと良好な協力関係を築き、農業現場の状況を深く理解し盛り上げていく必要があります。

将来への展望

中道:『Forbes 30 Under 30 Asia 2022』のIndustry, Manufacturing & Energy部門に選出されたことについては、これまでの様々な取組が評価されたものと大変喜んでいます。また、すでに紹介した二つのプロダクトにより、約2億1千万円(160万ドル)を調達できました。最近では多くのJAさんと提携し、新たな事業も展開しています。経済の活性化をとおして日本の農業の発展に貢献したいとの想いは、将来も変わらず持ち続けていると思います。
 近年、IT・医療分野においては多くのスタートアップ企業が創業され、中には急成長を果たした企業もあり、時価総額1000億円、1兆円を超えるところも出てきています。いずれも現在の産業や社会の課題を打破し、それぞれの発展に貢献することを期待されていますが、農業界にはまだ事例がありません。
 JAや行政、自治体を中心に農業界に変革をもたらすスタートアップを支援する仕組みが整えられつつある今※、AGRISMILEは、農業に関わる人々とともに課題解決に取り組み続け、結果的に農業の持続可能性、発展への貢献が期待される企業として、国内外で評価される存在になりたいと考えています。そのために重要なのは代替不可能性。農業界の多くの組織にとって、AGRI SMILEが替えの効かない存在になる。この想いは現在の50名の仲間にも伝え続けていて、今後、組織が成長する中でも大切にしていきたいと思っています。

※支援事業例
農林水産省「農林水産業等研究分野における大学発ベンチャーの起業促進実証委託事業」
生物系特定産業技術研究支援センター「スタートアップ総合支援プログラム」
一般社団法人AgVenture Lab「JAアクセラレータープログラム」
愛知県「あいち農業イノベーションプロジェクト」
浜松市「浜松市ファンドサポート事業」等

高校生・大学生へのメッセージ

中道:一生懸命考えながら物事に真剣に打ち込むことは非常に重要です。がむしゃらに頑張るというより、思考を凝らすことです。継続的に業務の改善を促すには、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)サイクルを繰り返すという考え方があります。私は中学・高校時代は野球に情熱を注ぎ、大学院では研究に打ち込みましたが、PDCAを回すという考えは、スポーツにも勉学にも、また経営にも通じます。正しい努力を続け、常に改善を加えることで必ず成功への道が開けると思います。
 また、少しストレスを感じますが背伸びをしなければならないような環境に身を置くことも必要だと思います。人間だれしも周囲からの影響を受けます。熱量が大きく刺激を受けられる人が周りにたくさんいて、自分の力を100%以上発揮しないとついていけないような環境に身を置くことも、大きな成長につながると思います。
:昔から、「できるまでやる」を合言葉に、部活動や研究をはじめ、様々なことに挑戦してきました。多くのことはなかなか思い通りにはいきませんが、途中であきらめず、やり方を工夫して最後までやり抜くこと。信じる通りになるのが人生である、と考えるのもいいでしょう。 
 同時に他者との協調も必要です。人間ひとりでは何もできませんし、生きてもいけません。人それぞれ得意不得意、好き嫌いがあるのだと、お互いを尊重し合いながら協調的に取り組む。そうすれば相乗効果が生まれ、一人では到達ができないような地点に辿り着くことができると思います。

 2022年、本誌では高等学校での探究学習の始まりに合わせて、探究のヒントを提供できればと、「学問と探究」と題して、大学・研究機関における最先端の研究を紹介してきました。反響は大きく、編集部一同、科学・技術の最新の研究成果を日本の将来を担う高校生に伝える重要性を再認識しました。一方、日本の現在おかれた立場からは、研究から得られた技術や知見を、若者が先頭にたって社会実装、ビジネスとして展開することも不可欠とされています。そこで本年最終号となる第150号は、学問と探究を発展させ「社会課題の解決と探究」をテーマに、研究や学びの社会展開、そのために求められるベンチャースピリット、アントレプレナーシップについて紹介してみました。 分野は、食と農業。去る10月16日は世界食料デーでしたが、2022年は、気候変動に加えてコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などにより、食料安全保障が脅かされた年でもあります。中でも輸入大国日本は、物価上昇等により、その影響を特に受けやすく、食糧自給率は38%(2021年、カロリーベース)まで落ち込んでいて、政府も『みどりの食料システム戦略』を打ち出すなど、食と農業については大幅な転換を促す時期としています。今後、日本の農業は、人工知能(AI)や情報技術(IT)、革新的なバイオテクノロジー技術、ドローンなどを駆使する一方で、耕作地のローカルな事情も考慮して生産力向上と持続性を両立する必要もあります。食と農業を舞台に、日本で、海外で奔走する若きアントレプレナーを特集しました。

大学の学びを活かし、リブランディングに挑戦

斗六屋4 代目 近藤 健史さん 1990年京都生まれ。 2012-2014年、京都大学大学院で微生物を研究。 2014-2016年、卒業後、関西の老舗菓子店(たねや・クラブハリエ)勤務。 2016年、有限会社斗六屋に入社(家業)。2018年、イタリアで開催されたスローフードの世界大会“terra madre salone delgusto”に甘納豆を初出品。世界に甘納豆を通して日本文化を伝える活動も行う。2020年、代表取締役に就任。京都のクラフトチョコレートベンチャー「Dari K」とコラボし、世界的にも珍しいカカオ豆を使った進化系甘納豆“加加阿甘納豆”を発表。2021年、中川政七商店とリブランディングに着手。2022年、タイムレスなお菓子ブランド「SHUKA」を立ち上げる。趣味はイタリア語。

志は自然と人が調和した、美しい世界を伝え残す

去る10月6日(木)、1926年創業の京都の甘納豆専門店・有限会社斗六屋(所在地:京都市中京区、代表取締役 近藤健史)から、「自然の恵みに手を添える」をコンセプトにした、種と糖だけで作る≪タイムレス≫な菓子ブランド「SHUKA(しゅか)」がデビューしました。「砂糖漬け」と呼ばれる甘納豆作りで用いる古来の食品保存技術を活かしつつ、素材には従来の小豆や斗六豆の他、カカオやピスタチオなど、海外でも愛される種を採用。デビューに先駆け実施したクラウドファンディングでは開始4日で目標金額の150万円を達成するなど早くも注目を集めています。プロデュースした近藤健史さんに開発のストーリーをお聞きしました。


SHUKA誕生への道のり

 甘納豆は、まだお菓子が貴重な江戸時代、職人がお菓子を手軽なものにしたいと、当時原料として見向きもされなかったささげ豆に目をつけて開発した和菓子です。保存技術の一つである砂糖漬けで、豆を使う点で日本独自の食文化です。

 大学院卒業後、家業を継ぐことを決意してから、私は甘納豆を残したい一心で、さまざまな活動をしてきました。その中で、甘納豆の抱える課題と価値、強みと弱みの両面に気づきました。課題は、お年寄りのお菓子、古くさい、甘すぎる、甘い納豆などのネガティブなイメージが付きまとうことです(ちなみに甘納豆という名前はいわゆる「納豆(糸引き)」に由来するのではないので、発酵食品でもありません)。

 一方で豆と砂糖だけでとてもシンプルで、植物性で、アレルギーや宗教、菜食主義などさまざまな食の制限がある人も、安心して食べられるのが強みです。特に私が大切にしたいと思ったことは、素材の色や形を丸ごと残すといった、生き物、自然をリスペクトする姿勢です。 甘納豆を、そして日本の文化を世界に発信したいとの想いから、2018年にはイタリアのスローフード世界大会に出品しました。結果は、予想していたことでもありましたが芳しくありませんでした。ここで考えさせられたのが、世界中で愛される菓子とは何か?ということでした。答えの一つは現地で見たチョコレートにありました。これをヒントに、2020年、カカオ豆の甘納豆を発表しました。しかし、多少は評価されたものの甘納豆のこれまでのイメージを変えるまでには至りませんでした。やはりプロダクトより上位の、ブランドを作る必要があるのではないか。そう思った私は、いっそのこと世界に通じるブランドを創りたいと、ブランディングで有名な中川政七商店の中川政七会長に会いに行きました。お聞きしたのが「甘納豆は根源的に種と糖」という一言。ここから、それを端的に表現した種の菓子ブランド「SHUKA(種菓)」が生まれました。

伝統の継承と新たな挑戦

 甘納豆を残したい。廃業が続く甘納豆業界の中で、私は、「SHUKA」に甘納豆の古くて新しい形を託したいと考えました。私たち後継者の仕事は、元々あったものを丁寧に受け継ぎつつ、時代に合わせて変えていくこと。残す部分と変える部分とを見極め、創意工夫を怠らないことが、家業の存続に大きく関わっています。ここまでのところ、自社の強みである甘納豆作りの技術は継承しつつ、年齢や国籍を問わずより多くの人に食べていただけるように、コンセプトを大きく変えたことから将来の展望が開けてきました。

同世代の若者に憧れを

 将来的には、まず季節商品の開発に取り組みます。例えば果物は、西洋では砂糖漬けにするのが一般的ですし、本来”種”を運ぶためのものなので、SHUKAらしいと思います。種とさまざまな飲み物とをペアリングして楽しんでもらえるようにもしたいです。来年からは、種を使った洋菓子にも挑戦し、2025年の大阪万博で世界中の方々をSHUKAでおもてなしすることを目指しています。

 また、種に関わる新たな製品の開発や、海外を見据えたショップを展開し、世界中の人たちに甘納豆を食べてほしいと思っています。 少し抽象的な言い方をすると、甘納豆づくりを通じて、人と人、人と自然が調和した豊かな社会づくりに貢献したいのです。とても大それた望みですが、それを目指す中で、特に同年代の若い世代が伝統産業への「あこがれ」を持ってくれれば、これほど嬉しいことはありません。

高校生・大学生へのメッセージ

 これまで自分がしてきたことで、無駄なことはなかったと思っています。元々家業を継ぐ気はなく、研究者になりたいと微生物の研究に没頭していました。では経営者になった今の心境はどうかというと、ただ対象が変わっただけという感覚でしかありません。家業を継いだ当初私は、実務経験の不足を、大学で学んだ科学実験の手法で補おうと考え、先代の仕事を細部にわたってデータ化し続けました。その甲斐もあり、短い期間で先代の技を再現できるようになりつつあります。将来のことが見えなくても、その時その時に興味のあることに一生懸命打ち込む。そうすれば、目指すものにすぐにはつながらなかったとしても、いずれはそれが活きてきます。

 また、その時にしかできないことをやることも大事だと思います。私は大学院卒業後は、2年間老舗菓子店で働きました。家業を手伝った経験がなくすぐに働いても役に立たないだろうと思ったからです。同時に、家業を一度やり始めた以上、一生やり続けることになるとも思ったからです。ふりかえれば、あの時の2年間の経験は、今に大いに活きていると感じています。

SHUKAは、種と糖だけでできた、古くて新しい、素材の個性をまるごと味わえるお菓子

公式サイト、オンラインショップ: https://shuka-kyoto.jp/

きび糖や和三盆糖、有機ココナッツシュガーなど、甘みだけでなく風味も大切にして種ごとに合う糖を職人がセレクト。種はカカオ、ピスタチオ、カシューナッツ、斗六豆、瑞穂大納言小豆、丹波黒豆の6種類。砂糖漬けの技術で種と糖を一体化させる。特にカカオは、皮ごと焙煎せずに使うことでチョコレートとは違い、よりフレッシュでフルーティーな味わいになっている。原材料の種と糖も、近藤さん自ら産地まで赴く等、徹底的にこだわっている。独自製法により、形や色だけでなくアルデンテな種感のある噛みごたえまでも程よく残しているため、素材の個性をまるごと味わえる。保存料や着色料など一切使わずシンプルに仕上げていながら、常温でも数か月日持ちする。抹茶や煎茶だけでなく、コーヒーや洋酒にも合い、ヨーグルトやアイスクリームのトッピングにもなるので、「素朴な味わいだからこそ叶う、自分だけのオリジナルな食べ方を愉しんでほしい」と近藤さん。

“種の気持ちになれる”コンセプトショップ

ブランド立ち上げと同時にオープン。コンセプトである「自然の恵みに手を添える」を体感してもらうために、細部までとことんこだわったショップ。床・両壁・天井は全て土壁(水・土・稲藁を使用)で、店内には小さな天窓から自然光が差し込む。土に植えられた種が、空に向かって芽を出す時に見るであろう景色を再現して、“種の気持ち”を疑似体験してもらおうというもの。テラスには白花豆を植える予定で、「産地の北海道に行かなくても白花豆の育つところを見て生命力を感じてもらいたい。また、年とともに変化しやすい銅や、農業の象徴である鉄を積極的に建築に用いることによって、種とともに生きることを表してみた」と近藤さん。昔から使用していたテーブルなども設置され、京都らしい古風な雰囲気も醸し出している。

Sustainable First
支援するのではなく、目線を合わせてともに歩む
~タンザニアでの挑戦~

株式会社Darajapan 代表取締役 角田 弥央 さん 株式会社Darajapan 代表取締役 角田 弥央 さん
~Profile~
明治薬科大学薬学部卒業。人材系の企業に10ヶ月勤務後、2020年1月に退職し、エンドレス株式会社取締役に就任。株式会社Darajapanを立ち上げる。NPO法人Be&CoJapan代表理事、交水社株式会社取締役としても活躍。主な受賞歴は、30 UNDER 30 JAPAN 2021(世界を変える30歳未満の日本人30人)選出、Vision Hacker Awards2021大賞他。東京都立両国高等学校出身。

大リーグの大谷翔平さん、モデルのトラウデン直美さんらと並び、社会起業家としてForbes 30 UNDER 30 JAPAN 2021に選ばれた薬剤師がいる。タンザニアで起業したDarajapanの角田弥央さんだ。「30 UNDER 30 JAPAN」は、次世代を担う新たなリーダーを発掘し、ビジネス、サイエンス、スポーツ、アートなど多様なジャンルで才能ある30人に光を当て、Forbes JAPANとしてその活躍を後押しすることを目的とした企画。言わば、世界を変える30歳未満の日本人30人である。株式会社Darajapanにかける想い、タンザニアでの事業展開の難しさと可能性、将来展望に加え、現地での私生活についてお聞きしました。高校生や大学生、未来の起業家に向けたメッセージもいただいています。



株式会社DarajapanとNPO法人 Be & Co Japanでタンザニアの貧困格差を解消したい

 様々なプロジェクトを展開していますが、主に衛生環境の改善、および雇用創出と人材育成に貢献する事業を進めています。

 一つは、ごみを原料としたバイオマスブリケット(いわゆる豆炭)、食料残差(=廃棄物)からのモノづくりで、生ごみを再利用して調理用燃料を製造・販売することに挑戦しています。タンザニアの農村部では、調理に薪や炭を使用します。その際に発生する煙が原因で健康被害を受ける人が多く、有害な煙を出さない新しい燃料を開発することで、衛生環境の改善と健康被害のリスク低減が期待されます。現在は水分量などを調整しており、製品開発の段階です。

 タンザニアで生活し始めてから新たに開始した事業もいくつかあります。例えばインターネットカフェ。ストリートボーイズと話をする中で、タンザニアにはその日暮らしの若者が多いことに気づきました。そこで、飲食店なら特別な資格や経験がなくても勤まりそうだということから始めました。今ではエンジニアやウェブデザイナーといったIT人材を養成するなど、国際協力を推し進めています。

 Darajapanに加え、最近はNPO法人Be& Co Japanを立ち上げ、クラウドファンディングなども行っています。事業としては、医療アクセスの改善を目的に、医療者・妊婦さんに命の足である自転車を届けています。日本の大学で廃棄予定の自転車をタンザニアへ輸送し、現地の医療施設や妊産婦に届けるだけでなく、自転車を修理・整備する自転車修理工となるための職業訓練や、社会の一員として活動するためのワークショップなどを行うとともに、自転車が交通手段として利用できるような仕組み作りに着手しています。

 二つの組織で展開する事業のオーナーや従業員は全てタンザニア人です。私が行うのはお金の管理や全体の工程管理。事業化に際して最も大切にしていることは、ひたすら彼らの目線でヒアリングを繰り返すことです。支援するのではなく、目線を合わせてともに歩む、ともに改善する意識を持って展開していくことで、自分が抜けた後もその事業は回っていくと信じています。日本人としての視点も大切にしつつ、日系企業と協力しながら今後もサステイナブルファーストで事業を進めていきます。


なぜタンザニアなのか?
インドネシアで目覚めた海外への想いからDarajapan創業に至るまで

 漠然と海外で働きたいと思ったのは大学一年次。もともと海外には全く興味がありませんでしたが、父親の友人を訪ねてインドネシアに渡航したのがきっかけでした。

 スラウェシ島というインドネシア中部にある島で現地の方々と交流する中で、様々なカルチャーショックを受けたことを今でも鮮明に覚えています。彼らは掘っ建て小屋に住み、その日暮らしであるにもかかわらず、生活は充実していて本当に楽しそうに見えました。一方私はというと、東京で何不自由なく勉学に取り組み恵まれている環境にあるにも関わらず、なぜか幸福感はありませんでした。

 世界をもっと見てみたい、海外で働きたいと、インドネシア訪問をきっかけに目覚めた私は、その後文部科学省が展開する『トビタテ留学ジャパン』奨学生に選ばれ、エジプトとイギリスへ薬学留学する機会を得ました。製薬会社でのインターンシップや大学での授業を通し、より現場に根差したところで働きたいという想いを募らせました。

 タンザニアとの関わりは、ABEイニシアティブ※を利用して来日した環境工学エンジニアであるタンザニア人に出会い、社会課題について意見交換する中で、タンザニア国営貿易会社でのインターンシップの機会を得たことに始まります。衛生環境市場を調査する中でビジネスの重要性を実感し、タンザニアの現場でのビジネス展開を目標に据えるようになりました。新卒で日系企業に就職はしましたが、タンザニアでの活動の基盤を整えた後、株式会社Darajapanを立ち上げました。

 ビジネスについては基本的には独学です。もちろんいくつかの会社の社長に直接教えを乞うたり、タンザニアでビジネスコンテストを運営している人に話を聞いたりはしましたが。

※African Business Education Initiative for Youth:2013年第5回アフリカ開発会議(TICAD V)にて安倍元首相が発表したプログラム。アフリカの産業人材育成と日本企業のアフリカビジネスをサポートする「水先案内人」の育成を目的として、アフリカの若者を日本に招き、日本の大学での修士号取得と日本企業などでのインターンシップの機会を提供する。


エネルギー問題や環境汚染、雇用不足などをビジネスの力で解決

 タンザニアでの事業展開で最も悩ましいのは、現地のビジネス環境が整っていないこと。仕事のうち9割以上は大変なことの連続です。金銭が絡む不正も多く、トラブルが起きた際、誰を頼っていいのか分かりません。日本では、社会人に必要なスキルは教育機関である程度身につけられますし、働き始めてからも社内研修などがあります。タンザニア人のほとんどは仕事に重きを置かず、その姿勢もしっかりしていません。タスクを詳細に伝えて、相手が100%理解していることを確認してから仕事をしてもらわないと、何日経っても何も進んでいないことがあります。宗教観が強い国でもあるため、仕事を進める努力を神に委ねてしまう人もいます(笑)。異文化を理解し、相手にあわせて進めることが本当に重要であることを日々学んでいます。

 課題が山積みのタンザニアですが、可能性は無限大だと思っています。何よりも人口増加は経済発展を予感させます。自ら学習する若者も見受けられるようになりました。停電で勉強できない、インターネットがないので調べることができない。こんな悪条件に置かれた彼らに、なんとか教育や訓練の機会を提供していきたい。ビジネスで収入を得られるようになれば、彼らはさらに機会を得られ、秘めた力を発揮できるはずです。彼らの多くは自分の周りの大切な人達、特に家族のために努力するので、家計を支えるためには強いハングリー精神を発揮して、様々な仕事をこなしてくれると思います。

 ところで、私が社会課題を解決するための事業を、非政府組織(Non-Governmental Organization: NGO)でなくビジネスで展開しているのは、経済循環を促し、サスティナブルな活動をしていくことを重視しているからです。私はこれまで、様々な国で、ODA(OfficialDevelopment Assistance:政府開発援助)やNGOの活動を見てきましたが、それらの多くは、大きな経費を投入した一定期間は組織をあげて開発を進めますが、資金がなくなると急に活動が止まります。このような活動には、光と影があり、持続性という観点からは疑問に思うことが多くありました。さらに言えば、経済循環を促せなければ継続性がないため、長い目で見ると彼らのためにはならないことが多いのです。

私が目指す未来とは

 10年後、立ち上げた事業が私の力なしで回っていれば理想的ですね。ただ、始めたばかりということもあって、あまり遠い先のことは考えられないのも事実です。そもそも、私を動かしてきた原動力は強い危機感です。

 人口が増加し続ける中で、この国はこのままで大丈夫か。社会の仕組みも、生産をはじめとする技術も、全人口を支えるのには全く追いついていません。このままでは貧困層は益々増えていってしまう。だから、積みあがる課題を解決する新たな事業が必要なのでは?―そんな想いから日々考えながら動き続けています。 数年後には、これまでに立ち上げた公衆衛生や雇用機会創出のための事業はできる限り現地スタッフに任せ、私は新たに浮き彫りになる課題に奔走できるような体制を整えたい。加えて、現地スタッフが新たな事業を始めたいと希望した際のサポート体制も充実させる必要があります。現地の若者には爆発力があります。最新のIT技術を使いこなせる層も厚くなっています。若い世代が新たなイノベーションを生み、それを見て、アントレプレナーシップを持った若者が次々に輩出される、そんな好循環の起爆剤になるような事業を、これからも立ち上げ続けていきたいと思っています。

高校生・大学生へのメッセージ


信念を貫く。信念とは、正しいと信じる自分の考えを信じる気持ち・信仰心のことを指しますが、私は常日頃から自分の軸をしっかり持って、周りに流されずに生きていくことを大切にしています。自分を信じて、時にはストイックに、定めたゴールに向かって突っ走る。手段は問いません。少し遠回りしても構わない。自分が情熱を注げるものを見つけ、それをひたすら追い続ける人はカッコいいですし、自分自身への責任も芽生えるから、幸福度も高くなると考えています。

問題の原因を自分の中に見つける。実は私は、幼いころから行動力があったわけではありません。何となく興味の向く方向は分かっていたものの、情熱を注ぐことのできることは何かと、常に模索していて、ずっとモヤモヤしていました。転機は大学時代、インドネシア、エジプト、イギリスなどを訪れ、その時の経験(=見て、聞いて、感じて、考えて)を経てはじめて、深く自分と向き合い、進むべき方向を決められるようになりました。高校生、あるいは大学生になっても、将来の目的がよく分からない、決められないという人もいるかもしれません。それはそれで仕方のないこと。大事なのは何事においても問題の原因を他人や周囲の環境のせいにしないことです。何事も自分事として捉え、その解決に向けていかに考え抜き、行動できるか、そこに人間としての価値があると思っています。

アフリカ諸国を訪問する。「アフリカに来たら人生観が変わる!」とよく言われますが、本当にそのとおりだと思うので機会を見つけて是非訪れてください。「アフリカ=貧困」、「支援が必要」というイメージがあるかもしれませんが国によってまちまち。学べることは測り知れないほどあります。ハングリー精神はその一つ。日本ではよく、「ゼロからのスタートだったので非常に苦労が多かった」などと表現されますが、アフリカ諸国の人々は奴隷貿易といった歴史的な背景を見てもわかるように、人として経済的・社会的・精神的に最低限の生活を送れるスタート地点に立つためには、マイナス50、マイナス100時点から這い上がらないといけません。皆もがいてもがいて、さらにもがいて生きています。そのため、機会があればそれをものにしようというモチベーションは非常に強く、実際に機会を得た時の爆発力たるやもの凄いものがあります。もう一つは宗教観を感じられること。主な宗教はイスラム教(約40%)、キリスト教(約40%)、土着宗教(約20%)。私は私生活からイスラム教を肌身に感じることが多いですが、日本ではあまり感じることのできない宗教というものに触れてみることで、人として大切にすべきモノ・考え方とは何かについて考え直すことができます。

タンザニアでの暮らし

 2021年2月にタンザニアに来ました。当初は日本と行き来する予定でしたが、現地でのビジネスや私の考え方を理解してくれる男性と出会い、結婚に至りました。現在は、子供も生まれ家族同士助け合いながら暮らしています。宗教柄、お付き合いの関係でいるよりも結婚が好まれること、タンザニアのカリブ文化(「近くで一緒にいること」が喜ばしいことであり、近しい関係を持つ価値観を大切にするから家族の猛プッシュがあったことなど、様々な環境が相まって出会って直ぐ結婚する運びになりました。結婚式ではアラビア語で様々な儀式が行われます。中でも思い出に残っているのが、結婚式直前1週間の準備です。イスラム教では新婦が他の人の目に入らないよう神聖な存在として扱われることから夫にも会えず、部屋に引きこもって生活します。実に1週間ぶりとなる式当日で夫と初めて顔を合わせ、一緒に暮らすことが許されます。

 これまで女性としての自分を意識したことはほとんどありませんでしたが、イスラム教徒になったこと、結婚前後、そして出産といった一連のイベントを通じて女性を意識するようになりました。日常生活では、ヒジャブ(アラビア語で「覆うもの」の意)を巻いて頭を覆っています。タンザニアを含め、アフリカ諸国は人口が増加傾向にありますが、これは性教育が不十分であるということよりも、誰もが子供や家族を大切にすることによるのだと、彼らと一緒に生活しながら感じています。子育ても皆(=コミュニティ)で支える意識が浸透しており、小中学生でさえ赤ちゃんの世話が上手で、子育て環境は充実しています。当然、夫婦共働きも十分機能していて、子育て環境という観点では、少子化に悩む日本の学べることは多いと思います。

角田さんが見るタンザニア


~地理・産業~

 タンザニア連合共和国、通称タンザニアは東アフリカに位置する共和制国家。サブサハラ地域の国の中では比較的経済発展しており、都市部では貿易が盛ん。観光業も主要な産業で、タンザニア国立公園サファリツアーやザンジバル諸島のリゾートは有数の観光地としてよく知られている。一方、都市部を離れると農村部では貧困層が多く、アフリカ諸国の中では貧富の差が大きな国とも。国民の約8割は農業に従事しているが、多くは小規模農家だ。  

「大好きなタンザニア産コーヒーは爽やかな酸味と程よいコクが特徴的」と語る角田さん。ビジネスについては、「ビジネスマインドを持った人は全体的に少ない印象。元々社会主義を掲げていた国だったので、皆、平等に!というマインドセットが根付いているのでは」、また「健康に対する意識は低い」と角田さん。

~地理・産業~

 イスラム教の主要なイベントであるイード・アル=フィトルは、ラマダーンの終了を祝う大祭。ラマダーンは、イスラム暦第9月の約1か月、日の出から日没までの間で、断食の当日は、多くの人々が新調したばかりの衣装を着て街に繰り出したりもする。一方、イード・アル=アドハーは犠牲祭とも呼ばれ、イスラム暦第12月10日から4日間にわたって行われ、羊や牛を家族や友人、そして貧しい人々に捧げる。

「これらのお祭りごとに参加すると強い一体感を感じる。結婚後はそれ以前に比べ、親族や友人などとの仲間意識も格段に高まった」「すべてのものの中に神が宿ると言われているが、これは見えないものを信じる日本人の考え方とどこか通じる」と角田さん。

17歳で、すべての人が利用できるトイレの普及を目指すプロジェクト、Plungerを立ち上げ
漫画でSDGsについて学べるトイレットペーパーを開発

東京大学経済学部1年/Plunger 代表
原田 怜歩さん 公文国際学園高等学校出身 東京大学経済学部1年/Plunger 代表
原田 怜歩さん
公文国際学園高等学校出身

私たちPlungerは、トイレにおけるジェンダー課題の解決を通して「男/女らしい」という概念を脱ぎ捨て、「みんな違って、みんないい」と、それぞれの多様性を分かち合える社会の実現を目指しています。
 トイレの重要性を感じたきっかけは、中学3年次に、アメリカで2週間滞在した際、無機質なトイレが原因でホームシックを経験したことです。日本の温かい便座や消音設計が素晴らしいものと感じる一方、アメリカで出会ったジェンダーフリートイレに魅力を抱き、高校1年次にアメリカへ一年間研究留学しました。COVID19の急速な蔓延で緊急帰国を迫られ、現地での研究を打ち切る形となる中、何か日本でもできることは無いかと考え、様々な人を巻き込んで幣プロジェクトを立ち上げました。活動を続ける中で、社会課題の中でもとりわけジェンダー問題は関心の有無に大きく左右されやすい事に気が付き、まずはそれについて興味関心を持ってもらおうと考えました。
 代表的な活動が「SDGsを漫画で学べるトイレットペーパー」の製作及び普及です。SDGsの 17のゴール一つひとつを漫画形式で紹介したもので、老若男女を問わず人々が日常的に手に取って、目にする革新的な教育媒体であると考えています。このトイレットペーパーを置いた空間はいわば令和の寺子屋になります。クラウドファンディングで集めた資金で全国の公共施設や教育機関に寄付し、多くの人が周りの出来事をジブンゴト化して行動できる社会創成を目指します。


大学生になって

 私は今春令和四年度学校推薦型選抜で東京大学経済学部に入学しました。面接は、自分の関心分野を専門にする教員との対話でしたが、それを通じて、大学での学びの方向性をそれまで以上に明確にすることができました。 東大では、推薦生一人ひとりに対してアドバイザーの教員がつき研究をサポートしてくれます。もちろんトイレ研究の専門家はいませんが、経済のみならずジェンダーや社会政策などの最前線の課題を、1年次から学べることは非常に有意義だと実感しています。また、推薦生同士のつながりも非常に強く、様々な分野でパイオニアを目指す仲間との定期的な交流は、自己の成長を大いに促してくれます。現在はさらに、高校時代に起業したものとは別に、高校時代から想いを共にしてきた友人や大学で出会った友人らと、社会や自身の興味関心について、対等に話し合えるプラットフォームの制作やアプリの開発を行っています。


起業関連の将来の目標や構想

 私は将来、マイノリティコンサルタントになりたいと考えています。きっかけはPlungerの活動を通じてLGBTや障がいを抱える、いわゆるマイノリティにあたる人が、生産や消費を通じた社会参画に大きな意義を見出していることを知ったからです。
 現在、マイノリティの多くは、比較的雇用や賃金が不安定だったり、職場環境に馴染めていなかったりするケースが見られます。政府の方針や職場の制度面には変化が見られますが、労働環境そのものはあまり変化していないことに疑問を抱きました。偏見や統計的な差別などの要因はいくつか考えられますが、何よりもマイノリティに関する研究データがほとんどなく、実態がつかめていません。私は労働経済学等を中心に幅広く学びながら、新しいマイノリティ経済学を切り開き、将来的には企業とマイノリティを繋ぐコンサルタントになりたいです。
 正直な話、この活動が社会にどれほどの影響を与えられるかはわかりません。しかし、自らの体験から、一人ひとりらしさを表現できる社会はすべての人が主役になれます。そして最終的には企業と個人が互いに働きかけあい、コンサルという職がフェードアウトしていくことこそが私の研究の理想像です。

高校生へのメッセージ

 高校生の頃、自分が想像していた人生と、今の私を照らし合わせてみると共通項の方が少ないように思えます。私がトイレの研究をしたいと言ってから、周りの人や環境が自分では想像もできなかった様々な出会いをもたらしてくれました。コロナウイルスの蔓延によって、研究打ち切りなどにも見舞われましたが、角度を変えてみるとオンライン会議システムが整備され、これまで会えなかったような海外の人とも話せる機会ができました。
 何かをしたいと決めた時、変えられるのはもちろん自分自身です。しかし、その想いを後ろからそっと推してくれるのは周りだと思います。ぜひ、周りに自分の意見を発信して、ジブンの応援団と一緒に己の道を突き進んでいってください!!

Better late than never
国際的な教育・研究環境で行動力を身につける

沖縄科学技術大学院大学(OIST)・一貫制博士課程2年 長谷川 のんの さん 祖母の影響で幼少期より英語に親しみ、カナディアン・インターナショナル・スクール(小学校~高校)を経て、2017年カナダ・ゲルフ大に入学。在学中のインターンシップ制度を利用してOISTで数か月、ミツバチの研究に従事。その後、世界各国から学生の集まる難関の選抜試験を突破し、ゲルフ大学卒業後にOISTの一貫制博士課程に進学、現在に至る。

一流の研究者により世界トップレベルの研究が推進されている沖縄科学技術大学院大学(OIST)。2012年に博士課程を開設以降、教職員の約40%、学生の約80%が外国人という異質の大学院大学で、教育と研究は全て英語で行われる。2017年に一貫制博士課程に入学し、ミツバチの研究に勤しむのが長谷川のんのさん。ミツバチ研究との出会いやその面白さ、OISTの学習・研究環境などについて語っていただきました。


ミツバチとの出会い

 ゲルフ大学在学中に行ったインターンシップ先で、ミツバチの研究に従事したことが興味を持ったきっかけです。ゲルフ大学には「Co-operative Education Programs(協同教育プログラム)」という制度があります。学業の一環として正式に認められており、関連する分野での学習と有給就業経験を統合した教育モデルです。通常、大学での講義・実習に加え、民間企業や他の大学などで16か月のインターンシップを行い、学問的な基礎の上に実務経験を積み重ねることができるようデザインされています。研究を進める中で、ミツバチの奥深さに触れると同時に愛くるしさも感じ、世界的に減少傾向にあるミツバチを守りたいと思うようになりました。

OISTでのミツバチ研究

 現在は、ミツバチに寄生する「バロアダニ」と呼ばれるダニが媒介するウイルスを研究対象にしています。「縮れ羽ウイルス(DeformedWing Virus:DWV)」というRNAウイルスで、感染によりミツバチの羽が縮れることが名前の由来となっています。元々バロアダニは東洋ミツバチに寄生するダニとして知られていたのですが、1960 ~1980年代に西洋ミツバチへと宿主交代をしました。私の研究では、1980年代~2019年のバロアダニサンプルを世界各国から収集し、寄生していたウイルスの分布を解析することで宿主交代の歴史を紐解いていきます。西洋ミツバチは多種多様な花の蜜を集め、その過程で受粉を促すことから、研究成果は農業分野への応用が期待できます。


初めての論文発表

 2020年8月には、開発した二つの新たな研究手法についてまとめ、初めての学術論文を出版することが出来ました。一つはバロアダニからのDNAおよびRNAの抽出法。網羅的な解析では通常、DNAやRNAといった核酸が大量に必要となりますが、この方法を使えば、バロアダニ一個体から抽出した少量のDNAおよびRNAからウイルスの分布を解析でき、コストも抑えられます。もう一つはバロアダニを長期間保存できる新たな方法。生物学の実験ではしばしば、サンプルの保存にマイナス80度の液体窒素を使いますが、バロアダニを採取する屋外に液体窒素を持ちだすことは難しく、臨時に使用するドライアイスも持ち歩きには適しません。私は、エタノールにいくつかの溶液を混ぜることでこの問題を解決しました。

論文発表までのエピソード

 研究を本格的に始動してから、比較的短期間で成果を発表することができたのは、一つには、先輩や同僚など、近くで実験を行っている人の研究内容や手法に興味を持ったことだと思います。特にバロアダニの新たな保存法については、OISTのインターンシップ期間中に、実験を指導していただいていた研究員の方からヒントをいただきました。他のハチを研究されていましたが、その触角を保存するのに、なんとエタノール混合溶液を使われていたんです。苦労したのは、データを得てから論文にするまで。それまで講義レポートは作成したことがありましたが、必要不可欠な情報のみを使って成果を端的にまとめるのは難しかったです。また、DNA配列のデータ解析や統計処理など、それまで使ったことのない手法を使いこなせるようになるのにも時間がかかりました。

研究のこれから

 これまではミツバチに寄生するバロアダニのみが研究対象でしたが、今後は食虫植物に棲息するダニや、ハエなどの節足動物なども対象にしていきたい。食虫植物と節足動物のDNA配列を比較して、共生関係を築く生物種の遺伝学的特性を見出すのが目標です。OISTでは、自分の取り組みたい研究を提案し、指導教員の評価が得られれば承認されます。新たな研究分野に挑戦することに対して不安もありますが、同時に自身の研究遂行力をどこまで磨くことができるか、その限界にも挑戦していきたいと思います。

OIST入学の経緯とインターナショナルスクールで培ったスキル

 OISTを知ったのは、ゲルフ大学在学中のインターンシップで、指導いただいた研究員の方がOIST出身者だったからです。受験したのは、世界トップレベルの研究環境に加え、海に囲まれた沖縄という生活環境にも魅力を感じたこと。また、日本での生活や日本食が恋しくなっていたこともありました。  インターナショナルスクールでは英語力に加え、国際的な環境で勝ち抜くために必要なプレゼンテーションやディベートの能力を身につけることができました。日本の義務教育では、人前で自分を表現するためのプレゼンテーション力、他人の意見を認めつつ自分の考えを論理的に述べるためのディベート力を磨く授業はほとんどないと聞きますが、私の通ったスクールではそのような機会が多く、場数を踏む中で力がついていったと思います。いずれも研究を進める上でも必要不可欠。OISTの受験にも活かされました。

Better late than never 未来を広げる

 博士号取得後は、政策立案などに対して科学的な助言のできる専門家として活躍したいと考えています。先日、県の議員さんと話していて、その想いはさらに強くなりました。私のモットーは「Better late than never(遅くてもやらないよりは良い)」。これまで数回、大学生などを対象にした講演会に出席しましたが、そこでも必ず伝えています。私のような若者、特に学生は、失うものは何もないと思います。失敗を恐れず、チャンスがあれば挑戦する。たとえそのタイミングが周囲より少し遅かったとしても、「トライしよう!」と、思い立った時に行動に移すことが大切。それは必ず、自分の未来を広げることに繋がると信じています。

カナダ・ゲルフ大の奨学金事情

ゲルフ大学では、学生の学習継続を支援するために非常に手厚い奨学金制度が設けられています。2021年には、学業成績に基づき、4270万ドル以上の奨学金が学生に授与されました。課外活動の実績やリーダーシップ能力、ボランティア活動などでの功績が認められたりすると授与されることもあります。
詳細はこちら(https://www.uoguelph.ca/registrar/studentfinance/scholarships/index

大学ランキングからはわからない大学の実力 第一回
留学生からグローバル化を読みとる

Profile
1960年神奈川県生まれ。教育ジャーナリスト。朝日新聞出版「大学ランキング」編集者(1994年~)。近著に『日本の「学歴」』(朝日新聞出版 橘木俊詔氏との共著)。

2020年代に入って、新型コロナウイルス感染拡大で、多くの大学でグローバル化が思うように進んでいない。こうしたなか外国人留学生をしっかり受け入れているところがある。
 「大学ランキング 2023」(朝日新聞出版)によれば、外国人留学生の受け入れ数上位校は次のようになっている。
 ①日本経済大2952人、②立命館アジア太平洋大2422人、③早稲田大2049人、④立命館大1602人、⑤東京福祉大1530人となっている(2021年。正規の学部留学生で聴講生、研究生、交換を含まない)。上位3校は減少したが、大きく減らしてはいない。前年比で立命館アジア太平洋大は45人減、早稲田大は112人減にとどまった。一方、立命館大、東京福祉大は前年から増えている。  コロナ禍で外国人の入国が制限されたのに増加したのはなぜか。国内の日本語学校からの入学者、つまり、もともと日本に住んでいて大学を受験した外国人が多かったからといっていい。
 別の角度から見てみよう。留学生比率の上位校は次のとおりだ。
 ①愛国学園大84.6%、②至誠館大70.3%、③大阪観光大67.5%、④鈴鹿大59.4%、⑤日本経済大55.2%(定義は留学生数と同じ)。なお、留学生数が多い立命館アジア太平洋大は44.3%、東京福祉大34.8%、早稲田大5.4%、立命館大4.9%となっている。  外国人留学生数、比率から、大学のグローバル化をどう読み解けばいいか。わかりやすいのは立命館アジア太平洋大、早稲田大である。国際系学部の存在が大きい。外国人を積極的に受け入れて日本人学生と一緒に学ぶ。授業のほとんどは英語だ。  一方、それほど国際系を打ち出していない大学で上位にくるところは、留学生をたくさん受け入れ、卒業後、日本のさまざまな分野で外国人に働いてもらおうという考え方を示している。量販店での接客、福祉現場での支援などだ。なるほど、「経済」「福祉」が付く大学に留学生が多い。これは少子高齢化社会を考えると悪い話ではない。大学が日本社会のために、外国人で専門性が高く優れた人材を育成している、という意味においてすばらしいことだ。
 しかし、見過ごせない問題がある。
 留学生比率が高い大学に定員割れをしているところが少なからず見られることだ。高校からすれば、「日本人学生が集まらないから外国人を受け入れたのでは」と疑念を抱き、「日本人学生に対する教育のレベルは保たれるのか」と不信感を持ってしまう。留学生の日本語、学力のレベルに合わせた授業をしているのではないかと疑う。
 また、キャンパスに外国人がたくさんいることで、「日本にいながらまるで留学しているような環境」をうたう大学があった。ほんとうにそうならば、大学のあり方として悪くない。しかし、現実はどうか。留学生は生活のためアルバイトに追われ、日本人と交流する機会は少ない。ゼミや授業で一緒になるが、サークルなど課外活動で大学生活を楽しむというケースは、残念ながらそう多くは見られない。これは、多くの日本人学生から聞いた話である。もったいない。日本人学生、留学生いずれもお互いどうやって声をかけていいのかわからない。そんな現状がある。大学は日本人、外国人がディスカッションする機会をたくさん設定したらどうか。
 さらに、見過ごすと大変やっかいな問題がある。
 留学生数が多い大学のなかに出入国在留管理庁(旧・入国管理局)から在留管理面での不備を指摘されるところがあることだ。授業に出席せずに就労という不法滞在者あるいは行方不明者を出すケースだ。数年前、出入国在留管理庁は留学生の実態があまりにもひどい大学に堪忍袋の緒が切れてしまった。在留資格「留学」を付与しない、つまり留学生の受け入れを認めないというペナルティを科したのである。
 もちろん、こういう大学にもまじめで優秀な留学生がいる。出身国との懸け橋になりたい、研究者になりたい、経営者になりたい、と夢を抱いている。だが、留学先の日本の大学が経営至上主義で教育を蔑ろにして、あまりにも杜撰な在留管理を行い、「○○大学は不法滞在が多い」などとレッテルを貼られるのは、かわいそうだ。これでは日本を好きになれない。留学生数が多いランキング上位校はグローバル化がほんとうに進んでいるのか。どうも信頼できない――そんなシビアな見方をされないように、大学は外国人留学生をしっかり受け入れてほしい。日本人学生との交流を深める場を作ってほしい。
 グローバル化をはかる大学ランキングを作ると、大学そのもの、そして日本社会全体において、グローバル化が進んでいないことに気付く。

「論文」ってなんだっけ?

Profile
1973年石川県生まれ。2010~14年に文部科学省研究振興局学術調査官も兼任。2011~2014年総長学事補佐。専門は学問論、大学論、政策科学。南部陽一郎研究奨励賞、日本金属学会論文賞他。著書に「研究を深める5つの問い」(講談社)など。

 「論文」という単語を聞いて「なにそれ?」という読者はあまりおられないでしょう。テレビや新聞、WEBメディアでも「・・という論文が発表されました」と当たり前に耳にし目にしますね。
 しかし世間におけるこの「論文」の扱いには、研究者として不安に思うことがあります。
 それは、あまりにも確固たるものとして扱われている点です。確かに、論文には必ず結論があります。しかしそれは、仮のもの、途中経過の報告でしかない、翌年にはそれが覆される「論文」がでるかもしれません。
 それに、異なる結論を主張する論文もあります。よくコマーシャルで、「この効果は論文にも発表された」と宣伝されていますが、論文になったことは正しいことを意味するわけじゃありません。発表、つまり掲載される学術雑誌には、掲載に際してのハードルが極めて低いものから、すごく高いものまで様々あるわけです。
 私は論文とは研究者間の手紙みたいなもの、と考えています。「私、こう思ったんだけど、どう?」と専門家コミュニティに投げかけ、それに対して「へー、こういうのも考えられるんじゃない?」とまた論文で応じる・・・こういう積み重ねの蓄積が、知見となりその学術分野の価値を高めていく。
 今、学術界では大学ファンドによる「国際卓越研究大学構想」というものが話題になっています。詳しくは説明しませんが、ようするに、ここ十年来、中央官庁がしてきたことと同じで、全国から少数の大学を選んで巨額の資金を投入するという事業です。選出する際に参考にする指標が、質の高い論文の量。その前提には、論文は他の論文に引用されるほど注目度や影響力が大きい、すなわち質が高く、たくさん引用された論文をたくさん生んでいる大学が優れているという考え方があります。
 いやはや、これはどうしたことでしょうか。論文とは手紙であると言いましたが、量やそれについて語った人が多いというのは、「活発」であるとは言えるものの「優れている」ということではないでしょう。つまり、論文は、その内容、テーマや問いこそが大事です。学問である以上、それらは普遍性を帯び、一個人の関心でありながら同時に人類にとっての関心でもなければいけません。もちろん「人類に役立つものでないとだめ」ということでは断じてありません。そのテーマ、問いはなぜ問いとして在るのか・・・これを横置きにしては絶対にだめだと言いたいのです。これが学問の根幹だからです。
 手紙の内容ではなく、活発なことを指標にするから、手紙(論文)の捏造が増えるのは当たり前です。最近日本は、世界的にみて捏造大国になりつつある。それに、手紙がいくら増えても、それが人類に何らかの影響を与えなければ全く意味ないですよね。加えて、大勢の人に読まれた手紙のほうが優れてるなんてしちゃうと、注目されやすい話題、旬のネタを扱ったものばかりが集まり、それ以外は無視され多様性が全然なくなっちゃう。
 他にも言いたいことはたくさんありますが、とにかく手紙の量を評価指標の中心に用いるのはほんとうに変です。社会において学問を許されている大学こそ、経済合理主義や操作的科学主義に基づく可視的、計量的な指標と対峙し、「もっと大事なことを忘れていませんか?」と社会に対してメッセージを発信せねばならぬのに・・・と思っているのですがいかがでしょう。(続く)

東京都市大学
デザイン・データ学部 デザイン・データ学科

分析力 × 創造力 = イノベーション力

2023年4月、東京都市大学は文理融合の文化を育む横浜キャンパスに、新しい学部『デザイン・データ科学部』を開設します。
「データサイエンス」を活かした分析力を基盤に創造力を磨き、新たな「もの」と「こと」を具体的に構想・設計・構築します。
すなわち「デザイン」できる実践的な専門力を持ちあわせた、グローバルに活躍できる「イノベーション人材」の育成を目指します。
革新的でグローバルなプロダクト(もの)やサービス(こと)をデザインし、実際に人々の生活を豊かにする発明がイノベーションです。
文系理系を問わず、確かな分析力と創造力を兼ね備え、新たなイノベーションを起こしていく人材を育成します。


(※クリックすると拡大画像が表示されます。)

1年次~2年次:データ科学・デザイン・マネジメントの基礎的な知識を養う

分析力・国際力を身につけ、デザインとマネジメントの基本を学ぶ

データ科学科目では「もの」と「こと」を分析的に見る能力を、また外国語と国際教養を学び海外インターンシップに必要な能力を身につけます。同時に、「もの」と「こと」のデザインとマネジメントの基礎を学びます。

3年次~4年次:多彩な演習科目で実践力を養い キャップストーンプロジェクトで総括する

デザインを国際的・実践的に展開する

ユーザーエクスペリエンスデザイン科目とソーシャルシステムデザイン科目では、実践的なデザインとマネジメントを学び、人と社会に役立つ「もの」づくり・「こと」づくりを実社会や海外留学・海外インターンシップ先で実践します。最後にこれらの学びをキャップストーンプロジェクトで総括します。

★キャップストーンプロジェクト

企業や組織が直面する様々な課題について、チーム体制で、その解決を目指します。
課題の背景や文献の調査を行い、解決策を立案します。提案した解決策の実現性や有効性を検証し、チームでの議論、途中成果発表を繰り返して、最終的にプロジェクト報告書をまとめます。4年次に取り組むことで、本学部での学びの総仕上げになり、ここで得られた総合的な課題解決力をもとに、大学院では、さらに専門性を深めます。

★COOPプロジェクト

授業と学外での就労経験型学修を組み合わせた教育プログラムです。学生は一定期間、企業の現場で働くことで、就業経験と大学の単位を取得するとともに、実践力や総合的な社会人基礎力など、従来型のカリキュラムだけでは修得しにくい能力を効果的に身につけることを目指します。就業経験前には、就業経験後のレポート作成やプレゼンテーションなどを実務家教員のもとで体系的に学び、実践力、責任感、主体的行動力を身につけます。

学生全員が海外留学へ

デザイン・データ科学部では学生全員が海外留学します。本学独自のオーストラリアプログラム(TAP)への参加を基本とし、1年次からの準備期間と2年次約4カ月間の留学を組み合わせ、国際人の育成を目指します。準備期間では100日間の英会話レッスンもあり、安心して留学することが可能です。